
増加する独居老人
現代日本の「少子・高齢化社会」を象徴する現象として「独居老人」すなわち「ひとり暮らしのお年寄り」に関する問題がクローズアップされるようになってきています。
なんらかの理由によって単身で暮らす高齢者は昔からある一定の数はいたものの、日本の総人口に占める高齢者の割合が急増しているのと反比例して若者の数が減少していることと、平均寿命が延びていることなどの要因が重なって、今後も独居を選択せざるを得ない高齢者は増え続けることでしょう。
「独居老人」に関する問題点は、いくつか挙げられますが、最大の問題はひとり暮らしを当の本人が望んでいない場合がかなり多いという点にあります。
つまり、多くの「独居老人」は仕方なく一人暮らしに追い込まれている、というのが実情なのです。
独居老人を襲う犯罪
心ならずもひとり暮らしを余儀なくされる高齢者は、人付き合いを切望しつつも、なかなかその機会がないというパターンも少なくなく、このような高齢者をターゲットとした詐欺事件が近年急増してきていることも実に由々しき社会問題となってきています。
悪徳業者による詐欺商法や相次ぐ振り込み詐欺事件などは、いずれも話し相手がなく寂しい思いをしている独居老人を狙って巧みに話しかけて相手を信用させるという手口が用いられています。このような犯罪が連日報道されているにも関わらず、事件が後を絶たないのは、孤独感にさいなまれながら生活している独居老人には、正常な判断力ができにくくなっているという要因もあるようです。
2014年の時点で、65歳以上の高齢者の約1割以上がひとり暮らしという統計もあり、この割合は今後さらに増え続けていくことが予想されており、行政による対策はもちろん、地域社会ぐるみで独居老人に関わるトラブルや万一の場合の対策を講じることが急務とされています。
「日本の美徳」を今こそ
かつては「日本人の美徳」と謳われた「助け合いの精神」が昨今は希薄になってきていることと、西洋型の個人主義と合理主義の普及、さらには個人情報保護意識の高まりなどいくつかの素因が重なり合い、これに核家族化が追い打ちとなり、日本に数多くの独居老人を生み出したといえるでしょう。
したがって、独居老人に関わる諸問題は、まさに現代の日本社会が作り出した社会的病巣の表れと見ることも可能でしょう。誰にも看取られることなく息を引き取っていく独居老人の悲劇は、明日の自分自身の姿であると、全ての日本人が強く意識する必要があるといわざるを得ません。
少なくとも、ひとり暮らしのお年寄りの多くが非業の死を遂げるような社会を、我々の努力で無くしていくことが最も重要な課題といえるのではないでしょうか。
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